Back Home / Westlife

cafela2007-11-19

最近はなんかアンチ・ロック・ブログみたいになってるけど、今日もそんな話題を・・・僕がロック・ジャーナリズムに良い印象を持っていない理由の1つが、いわゆる”アイドル”に対する扱い。ブラック・ミュージック・ファンには白人音楽に対して偏狭な嫌悪感を示す輩が少なからずいて、そういう連中もどうかとは思うけど、アイドルに対してはロック・ファンより許容範囲の広い人が多い。ほら、デスチャとかアッシャーって確実にアイドルだけど、ブラック・ミュージック・ファンはちゃんと評価している。アイドル的魅力を持ったシンガーとトップ・プロデューサーとのコラボレーションこそが現在進行形のブラック・ミュージックだとわかっているからだ。


それに引き替え、ロック頭と来たら・・・(仮に)アヴリル・ラヴィーンのアルバムがいくら良い出来だったとしても、ちゃんと評価するロック・ジャーナリズムは少ないんじゃないかな。アイドルっぽい、ってだけでバカにされてるバンドも多いしねぇ。そもそもロックという概念とアイドルという存在自体が相容れないのはわかるし、ロック・ポップスのアイドルにはR&Bシーンのような革新性が少ないのも確かだけど、単純に音楽の出来で評価しろよ、とついつい愚痴りたくなる。まぁ、ごく稀にロック・ジャーナリズムがアイドルの評価に手を伸ばすこともあるようだけど、それは例えばブリトニーとかt.A.T.u.並みの社会現象になった時だけ。つまりは現象に対してなんかしらのロック的な肯定理由を見い出しているだけで、別に音楽そのものを評価してるわけじゃない、そんな気がする。


で、絶対にロック・ファンからも(そしてR&Bファンからも)理解されない、存在さえ無視されていそうなのがこのWestlife。日本のUKロック・ファンには、彼らのお気に入りバンドをチャート上で退ける存在として知られているかも知れないけど、音楽的にはほとんど興味すら持たれないだろう。そして、本国(実際はアイルランド出身だけど)イギリスでは売れっ子過ぎる故にもっと酷い扱いをされていて、去年、大衆紙の『The Sun』がウエストライフのUKアルバム・チャート1位を阻止しようと、オアシスのベスト・アルバムを買うように読者に呼びかける、なんてニュースを見た時にはまさに苦笑してしまった。でも、偏屈なロック・ファンの嫉妬なんか軽々と吹き飛ばすぐらい、向こうでのウエストライフ人気は凄くて、今回のニューアルバム『Back Home』も当然のようにUKアルバム・チャートで1位を記録している。やっぱ、凄いグループだよなぁ。


それにこのアルバム、かなりいい出来なのだ。先行シングルの「Home」がマイケル・ブーブレのカバーだったので、「ええ〜、またカバーかよ」としばらくは放置していたものの、いざアルバムを聞いてみるとこれが素晴らしい。プロが作った素晴らしい楽曲を歌の上手いシンガーが歌う、というのがポップスの基本だと思うんだけど、そのお手本とも言える出来映えになっている。日本では同時期に出たBackstreet Boysの新作『Unbreakable』が大ヒットしているけど、アルバム全体の完成度では間違いなくウエストライフに軍配が上がるはず。バックスの新作はいい曲もいっぱいあるんだけど、アルバムの顔となるべきアップ・ナンバーの出来がイマイチで、大人のグループへの脱皮が中途半端な感じなんだよね。その点、ウエストライフの方はミディアム〜バラードが中心の構成で、楽曲的にもまったく隙がない。


それにしても、毎回イギリスで安定したセールスを上げているのを考えると、向こうでは上手く大人のファンを取り込んでるんだろうな、と想像できる。そうだ、もう5年ぐらい前かな、ウエストライフのインタビューを聞いたら、ほとんどのメンバーがバックストリート・ボーイズを好きだと言っていたっけ。バックスも 後輩のウエストライフを見習って上手く大人のグループへイメチェンしないと、本物のBig In Japanになっちゃうよ。

Seven Second Surgery / Faber Drive

cafela2007-11-18

70年代ならともかく、今のロックに精神性なんてもんはまったくないし、必要もないと思う。例えば、今、”パンク”と呼ばれているバンドの大半は、サウンドの系統とジャンル分けの便宜上、とりあえず”パンク”と呼ばれてるだけで、いわゆる本物のパンクとはまったくの別物。まぁ、これは音楽ファンならみんなわかってるか。でも、そこを捉まえて「パンク・スピリットがうんぬん・・・」と批判しても意味ないと思うんだよね。それに「お前らはパンクじゃない!」と大御所や評論家に言われて傷つきそうなのはせいぜいグリーン・デイぐらいまでで、最近のバンドはそんなことあまり気にしないんじゃないかな。80年代に産業ロックと呼ばれてしまった連中が担ってたメロディアスなロックのメインストリームが、80年代後半からはハードロックや一部のメタルに、その後はちょっとだけヘヴィ・ロックに、そして今はポップ・パンクやエモに移ってきただけ。要するに、キャッチーないいメロディーを書けるロック界の才能が今はポップ・パンクやエモと呼ばれるジャンルに集まっている、ってことなんだと思う。大事なのは曲とライヴの良さ、後はルックスぐらいで、精神性なんかハッキリ言ってどうでもいい。


と、Faber Driveなる新人バンドのデビューアルバム『Seven Second Surgery』を聞いて、そういう気持ちがますます強くなった。カナダ出身のこの4人組、おそらく”エモ”とか”メロディック・パンク”とかおそらくそういった流れで語られるんだろうけど、ここに収められているミディアム・ナンバーなんかを聞くと、これはもはや普通のポップ・ロック。でも、とにかく曲がいいから、僕としてはそれだけでOK。シングルになった「Tongue Tied」なんて、まるで”売れっ子ソングライターが書いたみたいな”完成度の高い楽曲なんだけど、僕はこの表現を100%肯定的な意味で使いたいと思う。ただ何も考えずにキャッチーで爽やかな楽曲を楽しめばいいし、楽しめない人はそれぞれが思う「本物の」ロックを聞いてればいい。それだけだ。

As I Am / Alicia Keys

cafela2007-11-17

あいかわらずの知的美人で本当にタイプです、アリシアたん・・・みたいな感じの痛い内容にしようかとも思ったけど、一応マジメに書いてみよう。アリシア・キーズのニューアルバム『As I Am』。これが期待通りの内容ではないものの、凄く良いアルバムで、僕も現在ヘヴィローテーション中だ。アルバム全体の統一感が素晴らしいし、前作ほどのキラーチューンには恵まれていないものの、「No One」に続いてこれからチャートを賑わしそうな曲もいくつかある。個人的には、この先必ずやリード・シングルとしてヒットするであろう「Superwoman」と、今作の中では比較的キャッチーな「Teenage Love Affair」って曲が気に入った。


ただ、やはり気になるのはサウンド面の変化。何ヶ月か前にリンダ・ペリーが参加という情報を聞いた時から予想していた通り、かなりR&B色が薄くなってる。あ、ここで言うR&Bってのはいわゆる昔のリズム&ブルースじゃなく、90年以降のR&Bという意味。歌がソウルフルでビートの感触が90年代以降のものだから、とりあえずR&Bの範疇には収まっているけど、曲の作りもサウンドもかなり白人音楽寄り。これはもうR&Bではなくピアノ系シンガーソングライターのアルバムとして聞いた方がしっくりくる。だから、R&Bファンの間で賛否両論なのはよくわかるな。特にジョン・メイヤーが参加した「Lesson Learned」なんかは、ジョンの声が出てきた途端に違和感を感じるR&Bファンがたくさんいそうだ。


そして、この先予想できるのは、ロック系メディアで繰り広げられるであろう、ここぞとばかりの大絶賛かな。黒人音楽と白人音楽がいい感じに接近していった60〜70年代のサウンドを思い起こさせるから、オッサン世代のロック好きに歓迎されるのは間違いないし、ロッキンオンのようなトンがった(笑)メディアにも食いつかれる可能性はある。そう、まるでエミネムアウトキャストがロック・ジャーナリストにも受けたような感じ。で、そうなると、あまりR&Bアーティストっぽくない彼女のルックスとファッションが大きな威力を発揮するに違いない。

Timeless / Wet Wet Wet

cafela2007-11-16

久々に出たWet Wet Wetのニューシングル「Too Many People」が素晴らしい。録音がよくないのは残念だけど、メロディーといい、絶妙のテンポといい、グッとくるギターソロといい、上手くはないけど味のあるコーラスといい、本当によく出来たブルーアイド・ソウル。で、これはアルバムも聴くしかない!と思って、10年ぶりのオリジナル・アルバム『Timeless』を購入したわけなんだけど、これが正直言って期待外れ。マイナー調の歌謡曲みたいなバラードが多くて、「Too Many People」に並ぶ曲は見あたらない。まぁ、そもそも彼らはAOR的な洗練されたブルーアイド・ソウルをやるグループではないから、イナたいのはしょうがないんだけど、アルバムを通して聴くとちょっと胃もたれしちゃいそう。でも、「Too Many People」1曲だけでも購入した価値は多いにあると思う。ただ、このシングルはUKチャートでTOP 40にも入らず、どうやら華麗なる復活とはいかなさそうな雰囲気。87年のデビュー以来、すべてのアルバムをイギリスで大ヒットさせてきた彼らだけど、神通力もいよいよここまでか?



※ビデオ・バージョンの「Too Many People」はアルバム・バージョンとトラックがまったく違う。ソロがいいのは、断然、アルバム・バージョン。でも、ビデオを観れば曲の良さは分かっていただけるかと・・・。

Playlist / Kenny ”Babyface” Edmonds

cafela2007-11-07

先月Billboard Liveでやった公演は観てないんだけど、最近のベイビーフェイスというと、ライブのいいところで「Change The World」を演るのが定番になってる。でも、彼がいかにも”自分の曲です!”という顔をしてあの曲を歌うことに違和感を覚えるR&Bファンは少なからずいるんじゃないかと思う。僕は(白人音楽もR&Bと同じくらいに聞くけど)まさにその1人で、本当に良い曲だとは思うけど、ベビちゃんが書いた曲じゃないのに「Change The World」が彼の代表曲みたいになってるのはなんだかなぁ...と思ってしまう。それにアコースティック・サウンドを奏でる彼も決して嫌いじゃないけど、彼本来の魅力はキーボードのコード・ワークを中心に据えたサウンドにあると思うんだよね。90年代前半のプロデュース全盛期に放ったヒット曲のほとんどはキーボード・メインのサウンドだし、ソロ・アルバムで言うと、89年の2nd作『Tender Lover』の(LPで言う)B面、そして2005年に出たキラキラ・サウンドの前作『Grown & Sexy』が僕のツボ。一般にあんまり評判が良くないと思われる2002年の『Face 2 Face』も、たしかにネプチューンズとやった「There She Goes」こそ、”あら、頑張っちゃったのね”と思ったけど、名曲「What If」を筆頭に、キーボード主体の”ベイビーフェイス節”が詰まっていて僕は好きだった。


ところが、今年9月に出た新作『Playlist』はジャケ写からもわかる通りアコースティック・サウンド1本、しかもカバー曲がメインというなんとも微妙な内容。しかも(個人的な愚痴ですが)ユニバーサルに移籍ということで僕の手元には届かず、最近ようやく購入に至った。で、最初から”やはりベイビーフェイスの魅力はキーボード・サウンドにあり。アコギは置いて出直してきやがれ!”と書くつもりで聴き始めたんだけど、これが予想以上に良いんだわ。取り上げられているカバー曲のオリジナルは、ジェイムス・テイラーを始め、エリック・クラプトンボブ・ディランダン・フォーゲルバーグ、ブレッドといった白人アーティストばかり。それもR&B〜ソウル寄りのアレンジを施すわけではなく、ただただシンプルなアコースティック・サウンドに乗せて歌うだけ。でも、原曲の良さに彼独特の優しい歌い方が相まって、あぁこういうベイビーフェイスもありだなぁ、なんてあっさりと持論を撤回してしまった。さらに、彼自身のペンによる新曲(日本盤は4曲)もなかなか出来が良くて大満足。これまでキーボード・メインの音こそがベイビーフェイスだと思ってきたけど、彼本来のルーツはこういった曲たちに(も)あるんだろうか? 今回初めて本名をアーティスト表記にしてることからも、その可能性は大きそうだね。


ただ、このアルバムはもはやR&Bではなくソフトロックとしか言いようがない。こういったサウンドが彼の原点か、本当にやりたいことなのかはともかく、この路線を続けるならR&Bアーティストとしての彼は長く持たないと思う。こんなアルバムを出してしまって、アメリカのファンからそっぽを向かれてないのかな?ちょっと心配だわ。

The Road / Trueheart

cafela2007-11-04

イーグルスの2枚組新作『Long Road Out Of Eden』がどうにも重くて、メロディーが弱くて・・・なんて感じてしまう僕が目下聞きまくっているのがこれ。たまたま「The Road」という曲を聞いたのがきっかけで購入したんだけど、ひょっとすると、今年最大の掘り出し物かも知れない。ここまで70年代後半〜80年代前半のウエストコーストを感じさせる音には、もう何年も出会ってなかった気がするな。


Trueheartというのは、テキサスのシンガーソングライターRoss Vickを中心とするバンド、というかユニットで、この「The Road」が2枚目のアルバムになるようだ。で、何がいいのかと言うと、まずは曲がいい。ツボを押さえたキャッチーなメロディーの曲が全部で12トラック。それにソフトで適度に甘いヴォーカルも、きちんと練られたアレンジと演奏もいい。時々出てくるメロディアスなギターソロを聞くと、本当に懐かしい気持ちになる。そして、特に素晴らしいのが、緻密かつ繊細なコーラス・アレンジ。僕は最近のAAA系ポップ・ロックも大好きだけど、奴らはほとんどコーラスをやらないから、この爽やかなコーラス・ワークには完全にヤラれてしまった。曲の作りもサウンドも、まさにAOR全盛期のシンガーソングライターみたいな雰囲気なんだよ。いや、ホントに。


今のところCDBABYでしか買えないみたいだけど、このクオリティはとても自主制作だとは思えない。近いうちに、日本のAOR〜ウエストコースト・サウンド・ファンの間でも絶対に話題になると思う。

Just Like You / Keyshia Cole

cafela2007-11-02

キーシャ・コールのデビューアルバム『The Way It Is』が日本でリリースされなかったのは、完全にレコード会社の怠慢、というか大失態だと思う。おそらく、アイテム数が多すぎてそこまで手が回らなかった、とかそんな理由なんだと思うけど、その割に、内容がそれほどでもない&本国でセールス的にコケたアーティストをプッシュしたり、なにやってんのかなぁ?なんて思うことも多いわけで。まぁ、今のR&Bファンの大半は日本盤の出る出ないなんてそれほど気にしないとは思うし、実際、Keyshia Coleという名前は輸入盤のみで着実にR&Bファンの間に浸透した。でも、結局のところ、日本盤でプロモーションしないことにはグレーゾーンにまでは広がっていかないからね。FMのラジオ・ディレクターでさえ全米チャートをチェックしない人がほとんどだから、洋楽シーンの底上げという点から見ると、本国でヒットしていて日本でもある程度売れそうな作品の日本盤がリリースされないのは非常に痛い。


で、そんなキーシャ・コールが2ndアルバム『Just Like Me』でようやく日本デビューした。ヒットした名作をスルーした挙げ句、次の駄作をプライオリティにして外す、なんてことも多い日本の洋楽業界だけど、キーシャの2ndは1stを凌ぐほどの良い出来だし、アメリカでもヒットしてるから、まぁ遅いとは言え、タイミング的には悪くない。ところが、日本盤独自のトラック・リストを見て愕然。なんじゃこりゃ!1stからヒットした曲をボーナス・トラックとして入れるのはいいとしても、なんでアルバムのど真ん中に入ってんだ?これじゃ、アルバムの構成が滅茶苦茶じゃないっすか?


もちろん、これまでもこういった例はあった。例えば、僕がすぐに思い出したのは、BLUEの2ndアルバム『One Love』。このアルバムには1stからのヒット「If You Come Back」が堂々と差し込まれ、あろうことかメディアでのプッシュ曲にもなっていた。しかも、ブルーは1stアルバムも日本盤が出てたからややこしい。ようするに、1stにも2ndにも「If You Come Back」が普通に収録されていたわけだ。まぁ、ブルーの場合、この決断が日本での人気を高めたような気がするけど、キーシャの場合はすでにR&Bファンにはお馴染みの存在だし、強引に差し込んだ曲「Love」をリード曲にするわけでもないだろうから、こんなことをしてもあまり意味がないと思うんだよね。だったら、どんなに遅くなってもいいから1stもちゃんと日本盤として出せよと。


と、ひたすら愚痴ばかり書いてきたけど、アルバム自体は本当に素晴らしい出来。1stと比べると、ミディアム〜バラードのメロディーを重視した曲が多くて、個人的にはこの路線の方が好き。冒頭の2曲こそ"ヒップホップ・ソウル"って感じの音だけど、(アメリカ盤の)Trk 3「Fallin' Out」からラストまではどっぷりと浸れるはず。特に「I Remember」は親父世代も号泣必至の名曲でしょ。キーシャの歌い方はより丁寧で、ある意味"上手く"なった。1stの時みたいに不器用な歌い回しは少なくなったけど、あの胸を掻き立てるような切ない声は変わらず。ルックスにはそれほど惹かれないけど、この声にはどうしようもなくトキめくんだよねぇ。