Modern Minds And Pastimes / The Click Five

cafela2007-09-06

全米15位に食い込んだデビューアルバム『Greetings From Imrie House』から一転、100位にも入らず、豪快にコケたThe Click Fiveの2ndアルバム。売れなかった一番の理由はヴォーカリストの交代だろうかね。でも、僕はアルバム・トータルでは今回の方が好きだ。確かにFOUNTAINS OF WAYNEのアダムが提供して全米11位まで上がったデビュー曲「Just The Girl」に並ぶ曲は入ってないけど、1stシングルの「Jenny」を筆頭に曲の粒は揃ってるし、単調なパワーポップ1本やりだった前作に比べて曲調のバリエーションが増えたのもいい。だけど、この調子じゃもう日本盤は出ないんだろうな。


そもそもワーナーミュージック・ジャパンは彼らを売る気がなかったんだろう。伝説になった(笑)UDO MUSIC FESTIVALに出演するってことで「とりあえず出しました」という雰囲気が丸わかりで、個人的にプッシュしていた僕はもの凄く歯がゆかった。まぁ、絶対にUKロック・ファンしか聞かないような地味〜なバンドでもちゃんと日本盤を出しているのを見るに、おそらくあそこはロック好きが多い会社で、アイドルっぽい雰囲気で売っていたクリック・ファイヴはスタッフのお眼鏡にかなわなかったのだと想像できる。で、そのおかげか、UDOフェスのライブには固定ファンがほとんどおらず、メンバーの頑張りとは裏腹に思い出すだけで悲しくなるほどの盛り上がりにしかならかった。もちろん、UDOフェスの客自体ほとんどいなかったわけだけど、洋楽アイドル好きがもう少し付いていれば、さすがにあれほどまでの惨状にはならなかったはずだ。彼らのキャッチーな楽曲は幅広い層に聞いて貰えるポテンシャルがあるし、メンバー全員がバークリー音楽院の出身ってことで演奏も良い。ちゃんとプロモーションすれば、きっちり結果は出たと思うんだけど。


思えば、BB MAK、POINT BREAKといった(音楽性は違うけど、なんとなくクリック・ファイヴと雰囲気が被る)先達も短命だった。果たしてクリック・ファイヴはこのまま消えてしまうのか? 今後の展開を見守りたい。



追記:とまぁ、好き勝手に書き殴っていたら、ちゃんと日本盤を出すみたいだし、来日公演までやったようで・・・すんません! でも、日本盤にしても来日にしても、どうもワーナーではなくウドー主導のように見えるんだよねぇ。

Frank / Amy Winehouse

cafela2007-08-26

サマソニでのブラック・アイド・ピーズのステージで、ファーギーがこんなフレーズを歌った。♪They tried to make me go to rehab. I said....すると、観客の中からちゃんと♪No, no, no〜という声が帰ってきたのだ。もちろんこれは目下大ヒットしているAmy Winehouseの曲「Rehab」の一節だけど、これに僕はちょっと驚いた。「この曲はもう日本でもここまで浸透しているのか」と。そう言えば、同じくマリン・ステージでは誰かのライブの前にSEとしてこのアルバムがかかってたな。


そんなわけで、アメリカでのブレイクに伴って、ようやく2ndアルバムの日本盤リリースが決まったエイミー・ワインハウス。もちろん注目度が上がったのは嬉しいことなんだけど、僕のように1stアルバムから絶賛してた人間としては、ちょっとだけ面白くなかったりもするわけですよ。しかも、ロック・ファンも注目してる、なんて言われると余計にね。いやまぁ、「ワシはずうっと前から注目しとったんやでぇ」なんて吠えるのがみっともないってのは僕もわかってますよ。でも、今回ばかりは言わせてください。世間では「Rehab」は2007年夏のヒット曲みたいになってるけど、あれは僕にとって2006年秋冬のヒット・ソングだ。本国イギリスでシングル・リリースされた時点のね。


でも、あくまで個人の嗜好の問題だけど、僕は今回の『Back To Black』よりも1stアルバム『Frank』の方が好きだったりする。で、今作と前作の何が違うのかと言うとバック・トラック。『Frank』の時は”70年代テイスト”で洗練されているサウンドだったのが、新作『Back To Black』ではさらに時代を溯って”50〜60年代テイスト”かつ少し泥臭くなった。そもそもエイミー姐さんの酒焼けした豪快なしゃがれ声は、メイシー・グレイなどと同様、本来の僕の好みではない。つまり、1stの時は洗練されたトラックのおかげで、アクの強い歌が上手く中和されていたんだけど、今回のアルバムだと少し渋みを強く感じてしまうわけだ。でも、なんだかんだ言いつつ『Back To Black』もUK盤が出ると同時に取り寄せて、かなり聴き込んだし、仕事でもよく使ったけども。ちなみに、この音の違いはプロデューサー云々というよりも時代の流れが大きいように思う。というのも、去年はクリスティーナ・アギレラの『Back To Basics』やアウトキャストIdlewild』といった"70年より前"の音に今のビートを合わせるのがトレンドの1つだったから。


ということで、今回のアルバムを聞いて少し合わないな、と思った人でも、ひょっとすると1stアルバムならいけるかも知れない。少なくとも1stの方がお洒落で洗練されているのは間違いない。だから、これからも僕はたぶん『Back To Black』よりも『Frank』を愛聴していくんだろうと思う。ちなみに『Frank』の中で一番僕が好きな曲は、シングル・カットもされた「Stronger Than Me」。♪You should be stronger than me. You been here 7 years longer than me. Don't you know you're supposed to be the man…なんて歌われちゃうと、男としてはちょっとチクチクしますわな。


ところで、『Back To Black』で大ブレイクしたと思われているエイミー姐さんだけど、実は1stアルバムの『Frank』もUKアルバム・チャート3位だから十分ヒットしてるんだよね。でも、その時は日本では完全無視。一度、m-floが12inchをラジオでかけてたのを聞いただけで、少なくとも周りで彼女のことを知ってる人なんてまったくいなかったなぁ。業界人でさえもね。まぁ、所属レコード会社がユニバーサルなんだから日本盤が出なかったのもしょうがない。EMIかBMGかSONYなら、1stアルバムから日本リリースされてた可能性はあったと思うけど・・・話は変わるけど、最近はジャンルを問わず「いいな」と思うと半分ぐらいがユニバーサル系列でちょっとウンザリ。まぁ、レコード会社の事情もあるだろうからあまり責めたくはないんだけど、ユニバーサルって日本盤が出る割合が低いし、たいてい遅いし、チョイスも?ってことが多い。それになんだよ、このエイミー姐さんにつけた"激女"、"女EMINEM"ってキャッチ・コピーは? 的外れ&センス悪いにもほどがあるよね。

今さらサマーソニック報告その2(8月12日 日曜日。東京会場)

cafela2007-08-22

サマソニ2日目。ずっとマリン・ステージのアリーナで頑張った1日目とは違って、この日はお目当てのアーティストが少なかったのでスタンド観戦が多め。うーん、スタンドにいるとなかなか気持ちいい球場だね。こりゃ、今シーズン中に一度くらいは贔屓チームの試合を観戦にレフトスタンドを再訪問すべきかな。

  • The Twang

CDでシングル曲「Wide Awake」を聞いて、ギターの音のあまりのカッコ良さにぶっ飛んだザ・トゥワング。前日のエディターズよりは炎天下にも合っていて、気持ちよく踊らせて頂きました。残念ながらギターはCDで聞くあの音ではなかったけど、演奏もヴォーカルも新人とは思えない安定感で、特にUKロックとしては珍しく繊細でタイトなドラムがGOOD。でも、ツイン・ヴォーカルの片割れはかなり存在感薄かったね。

メジャーデビュー当時は仕事の関係で何度かライブを観たレミオロメン。そう言えば、わざわざ札幌のライブハウスで観たこともあったっけ(遠い目)。今回は最後の方だけスタンドからボーっと眺めてたんだけど、今はサポートでキーボードが入ってんだね。でも、演奏、特にベースは相変わらずイイと思うんだけど、歌謡曲臭いメロディーセンスがあまり好きじゃない、という気持ちは変わらず。かつては、レミオの演奏と歌でアジカンの曲をやってくれれば好きになるのに、なんて思ってた。

まったく初体験のバンドだったけど、さほど印象には残らず。ヴォーカルはいいんだけど、バンドの演奏はイマイチ。で、曲の作りがちょっと「惜しい」感じだった。もうちょっとフックが効いているといいんだけど。。。

スタンドから観てたんだけど、この日、僕が観た中では一番盛り上がってた。「Flathead」でモッシュして退場するヤツが大量にいたぐらい。で、アルバムを聞いた時もそうだったんだけど、実際にライブを観て改めて曲作りの上手さに感心!最近のバンドで、こんなに曲作りが上手い奴らなかなかいないよね。ところが、演奏は荒っぽくてイマイチ・・・まぁ、曲作りの上手さと演奏力を兼ね備えたバンドなんてなかなかいるもんじゃないか。

フラテリスとは対照的に、演奏はまぁまぁだけど、メロディーがまったく耳に入ってこない。うーん、アルバムは2枚とも持ってるし、まったく聞いたことがないわけじゃないんだけどな。で、印象的だったのは、ヴォーカルの声。というのも、ソウルでも歌えそうなのに、黒さの欠片もないロック、しかもあやふやな音程でシャウトしてたから。あと、MCで「大阪より東京のサマーソニックがBetterだね」なんて言わんとってよぉ。でも、最新作からのシングル曲「I Still Remember」は凄く好きだ。

おお、あっさりと見つかったよ!曲作りの上手さと演奏力を兼ね備えたバンドが!再びアリーナに降りて体験した初マニックス。とにかく最高でした。曲の良さ、演奏の良さ、ヴォーカルの声量、メンバーの存在感、もうすべてが文句ナシ。特に、印象的なギターのフレーズを絡めてキャッチーな曲を書くセンスに痺れたよ。これまで90年代以降のUKバンドではオアシスが一番好きだったんだけど、このライブでマニックスになった。だって、演奏力が違い過ぎるもん。ニューアルバムがあまりにも良くて今まで通ってなかったことを後悔したんだけど、今回のライブを観て過去のアルバムを全部チェックしようと誓った。今度、単独公演があったら絶対に行く。

  • CORNERIUS GRROUP

コーネリアスって、なんで世界的に評価されてるんだろうね。少なくともこの日のライブを観ただけでは僕にはわからなかった。時折、気持ちの良い音は鳴るんだけど、前衛的な曲はいいと思えなかったし、ヴォーカルも弱すぎる。たぶん、僕とはまったく聴き方をしないと良さがわからないんだろうね。

UNKLEDJ SHADOW & CUT CHEMISTをスルーして迷うことなく全力で前線を目指したペット・ショップ・ボーイズ。開始前から早くもバンド形式のライブじゃないことがわかって少しがっかりしたし、年齢層高めの観客はびっくりするほど踊らないヤツが多かったけど、とにかく最高に楽しい”ショー”だった。2曲目にやってくれた「Suburbia」はイントロだけで鳥肌が立ったし、その他もヒット曲多め。逆に最近のアルバムからは何かやったっけ??贅沢を言えば「New York City Boy」と「Home & Dry」辺りが聞けたら言うことなし。それも「Tokyo City Boy」だったら泣いたのになぁ(「New York City Boy」には「Paris City Boy」というバージョンがあるしね)。まぁ、ライブが進むにつれてさらにゲイ色が濃厚になっていくのには苦笑したけど。。。この後しばらくは自宅でもiPodでも彼らのアルバムをヘヴィ・ローテーションしてた。

今さらサマーソニック報告(8月11日土曜日。東京会場)

cafela2007-08-20

僕が今年の夏にした唯一の"夏らしいこと"がサマーソニックへの参戦。どんなに水分を取っても全部汗で出てしまう極限状態だったけど、やっぱ楽しかったよ。じゃ、とりあえず観たアーティストすべてについて簡単に書いてみよう・・・ちなみに、初日はずっとマリン・ステージに張り付いてました。

  • Editors

去年のサマソニでのパフォーマンスが良かったから期待してたんだけど、残念ながら炎天下で聞く音じゃない。ギターのリフは相変わらず高揚感たっぷりで気持ち良かったけど、途中から意識が朦朧として正直辛かったよ。でも、新作からの1stシングル「Smokers Outside The Hospital Doors」はライブの定番曲になりそうだと思った。後半のコーラスは、本国のライブだと大合唱になるんだろうな。

なんだかんだ言って盛り上がる観客に笑った。まぁ、ロッキンオン的フィルタを通さなきゃ、この人たちの技量は素直に受け入れられるはずだからねえ。Editorsでぶっ倒れて最初はアリーナの外れで観てたけど、さすがに「Ultra Soul」には大興奮して飛び上がってしまった。Hey!

一番楽しみにしてただけに、曲を知らない若い観客と、微妙にやりにくそうなジョンを見てちょっと複雑な気分だった。しかも、「Name」の時にはヴォーカル以外の音がPAからまったく出ないトラブルが発生。メンバーは頑張ってたけど、グタグタな印象は拭えず・・・でも「Iris」はちゃんと大声で歌ってきたよ。

この人の声は、典型的な芯のない白人声といった感じであまり好きではなかったんだけど、バンドもよかったし、本人のパフォーマンスも最高!それに38才とは思えない引き締まったお腹も凄かった。で、思い知ったのがヒット曲のパワー。だって、バック・メンバーがタンバリンでリズムを刻んだだけで、「あ、Sweet Escapeだ!」ってわかるんだから。

個人的に好きな曲はいっぱいあるものの、過去の取材で痛い目にあったこともあって、この人自身にはあまりいい印象がなかった。さらに、ある人からサマソニ直前に「アヴリルのライヴはねぇ...」なんて話を聞いていたもんだからなおさら。でも、今回はちゃんと力の入ったパフォーマンスだったと思う。まぁ、アヴちゃんはそもそもファンの女の子の前と取材相手の前で態度がまったく違う人みたいなんだけどね。。。1stからクリフ・マグネスのプロデュース曲を一切やらなかったのは残念だったけど、クソ暑い中で聞いても「I’m With You」はやっぱ名曲だったな。

グウェンと並んでこの日のベスト・アクト。TRAVISと迷いながらも、どちらかと言えばブラック・ミュージック派の僕としてはBEPを観ないわけにはいかない。PAの関係かファーギーの声がキンキンしてたのだけは気に入らなかったけど、ライブの進行、構成の上手さという点では過去に見たライブでも1,2を争うぐらい。でも、タテノリの曲になると急に元気になる周りの客に、「ああ、やっぱりこれはロック・フェスなんだな」と痛感。普段、ロックしか聴いてないヤツはライブの時に腰が入ってるかどうかでわかる!と思うのは僕だけですか?

APOGEE@代官山UNIT

cafela2007-05-17

僕が去年気に入った唯一の邦楽バンド、APOGEE主催のイベントがあるということで、運動不足解消を兼ねて代官山までチャリをすっ飛ばしてきた。


彼らの音楽との出会いは、去年夏に開催された伝説の(!)UDO MUSIC FESTIVAL。セカンド・ステージからメイン・ステージへ向かっている途中、客のいない(パッと見、10人以下の)小さなステージから僕好みの和音が聞こえてきた。まぁ、その時はPUSSYCAT DOLLSのことで頭がいっぱいだったから(笑)、いい感じの音だな、と思いながらもすぐにその場を離れてしまったんだけど、後でタイムテーブルと照らし合わせて知ったのがアポジーというバンド名。そして、その時点で出ていた2枚のシングルを聞いてそのクオリティにちょっと驚いた。こいつら凄いかも、と。


最初の印象は“キリンジ meets ACIDMAN”といった感じ。でも、11月に出たファースト・アルバムを聴いて、これこそ今までになかったタイプのバンドだと思った。ポイントは、捻くれたソングライティングと、シンセサイザーをフィーチャーしたスマートなロック・サウンドの融合、さりげなく取り込まれたブラック・ミュージックのテイスト、聴いていても恥ずかしくならない日本語詞、といった辺り。なにより独特のコード感と洗練されたリズムが、本当にキモチイイんだわ。かと言って、サウンドがすべての音楽ではなく、ちゃんとポップスとして魅力的な作りになっている。


で、この日、ようやく彼らのライブをちゃんと観る機会に恵まれたわけなんだけど、これが期待通りのパフォーマンスだった。まず演奏は文句なし! 特にタイトなドラムとベースが素晴らしくて、そこらのロック・バンドとは比べものにならない。そしてヴォーカルもいい。最近の日本にはムリヤリ声を絞り出すシンガーが多いけど、やっぱヴォーカリストは地声の良さが最重要だよなぁ、なんて改めて実感した。あと、CDで聞くと「いかにもシンセ!」という感じのキーボードが少し気になる曲もあるんだけど、不思議とライブで聞くとあまり気にならない。4人(+サポート1人)のメンバーがステージに立った時のキャラ立ちも面白いと思うし、今後が本当に楽しみだ。

Portable Sounds / TobyMac

cafela2007-05-13

いやぁ、こいつは凄いわ。3月に入手して以来、何度も聞き返したけど、早くも今年のベスト・アルバムはコレで決まりそうな勢いだ・・・それほどまでに入れ込んでいるトビー・マックの最新作。わかりやすく説明すると、彼のサウンドは「ロック、ヒップホップ、ゴスペル、ソウル、ファンク、レゲエetc…様々な要素を取り込んだミクスチャー・ロック」といった感じ。感触としては、90年代に一世を風靡したシュガーレイとかスマッシュマウス辺りに近いかな。けど、この人の場合、まさにワン&オンリーと呼ぶのがふさわしい。これほど幅広い音楽要素を取り入れながら、素晴らしくポップなサウンドを作り出せるアーティストはなかなかいないでしょ。


僕が最初に彼のことを知ったのは、2004年の前作『Welcome to Diverse City』からヒットし、個人的にもお気に入りだった「Gone」という曲。結局、その時はアルバム購入には至らなかったんだけど、今作を聞いてから慌ててすべてのアルバムを揃えた。まったく、こんな凄い才能の持ち主だったとは!もっと早く出会いたかったよ。ちなみに、2001年のソロデビュー作『Momentum』は少しハードでラップが多い印象だけど、基本的には前2作も今回と同じ路線。でも、曲が粒ぞろいという点で今回の『Portable Sounds』が最高傑作だと思う。キャッチーかつファンキーなオープニングの「One World」から、ゴスペル界のカリスマ、カーク・フランクリンをゲストに迎えたラストの「Lose My Soul」まで、一気に駆け抜ける40分弱。パワフルなサウンドと熱いシャウトを聴いているだけでとにかく元気が出る。


DC TALKというクリスチャン・ロック・バンドの一員としてデビューし、2001年にソロ・デビューしたトビー・マックことトビー・マッキーハン。バンド時代からずっとCCM(CONTEMPORARY CHRISTIAN MUSIC)の世界で活動していて、ソロ活動を始めてからもそこは変わっていない。要するに、どんなにハードなサウンドのロックだろうが、バリバリのヒップホップだろうが、歌詞は基本的にゴスペルに通じる世界。今回のアルバムは全米アルバム・チャートで初登場10位、全米クリスチャン・アルバム・チャートでは初登場1位に輝いている。これだけジャンルを超越したアルバムが(本来は保守的なハズの)CCMなのは不思議な気もするけど、逆にCCMだからこそ音楽的には冒険できるのかもね。ホント、こういうアルバムを聴くと、クリスチャンの人たちがうらやましくなるね。

Love & Pain / EAMON

cafela2007-01-29

一発屋」ああなんて悲しい響き。2003年にデビューしたニューヨーク・スタッテン・アイランド出身のR&Bシンガー、EAMONと書いてエイメンくん。デビューシングルの「Fuck It(I Don't Want You Back)」は、振られた彼女に対する恨み節が受けて世界中で大ヒット。イギリスを始め世界各国で本当にNO.1になり、アンサーソングがリリースされるほどの盛り上がりを見せる。しかし、この曲はあまりにも売れすぎた。


「Fuck It」がイギリスでNO.1を独走していた時、BBCのサイトでこんな投票が行われていたのを覚えている。「あなたはEAMONがONE HIT WONDERになると思いますか?」。その結果は覚えてないんだけど、要するにその段階ですでに彼は一発屋臭いと思われていたわけだ。でも、そう思った人たちに言いたい。あなた方はちゃんと彼のデビューアルバムを聴いたのか?! まったくもって個人的な意見だが、あのアルバムに捨て曲などない。あれは2004年のTOP 10に選びたいほどの名盤だ。


で、そんなエイメンのセカンド・アルバムが去年リリースされた。1stシングルはマイナー調バラードの「(How Could You)Bring Him Home」。この曲はアルバム・リリースの何ヶ月も前からラジオ・オンエアが可能となっていたにも関わらず、アメリカ、ヨーロッパのいずれでも僕が知る限りほとんどヒットしなかった。正直、僕も「アルバムからの1stシングルとしてはちょっと弱いな。ちゃんとアルバム出せるのかな」と思ったのを覚えている。ところが、、、11月になってようやくリリースされたアルバム『Love & Pain』はなかなかの出来映え。独特の歌唱法とメロディー・センスは相変わらず冴え渡っており、僕は1曲目が始まった瞬間にガッチリと掴まれてしまったのだ。


ちなみに、エイメンのお父さんはドゥワップ・グループにいたシンガーだったそうで、エイメンは自分の音楽を「Hoo-Wop」(HIP HOP + DOO WOPの造語)と称している。そう言われると、今回は前作以上にドゥワップのエッセンスを今のR&Bのセンスで仕立てたような曲が多い。特に素晴らしいのは、パーシー・フェイスによるイージーリスニングの名曲「夏の日の恋」をサンプリングした3曲目の「Elavator」。これはもう文句なしのキラーチューンで、何がなんでもこの曲をシングルカットすべきだと思う。残念ながら、彼が「一発屋」と呼ばれるのはほぼ確定してしまったようだけど、せめて僕だけでもこのアルバムを評価してあげたい。