Playlist / Kenny ”Babyface” Edmonds

cafela2007-11-07

先月Billboard Liveでやった公演は観てないんだけど、最近のベイビーフェイスというと、ライブのいいところで「Change The World」を演るのが定番になってる。でも、彼がいかにも”自分の曲です!”という顔をしてあの曲を歌うことに違和感を覚えるR&Bファンは少なからずいるんじゃないかと思う。僕は(白人音楽もR&Bと同じくらいに聞くけど)まさにその1人で、本当に良い曲だとは思うけど、ベビちゃんが書いた曲じゃないのに「Change The World」が彼の代表曲みたいになってるのはなんだかなぁ...と思ってしまう。それにアコースティック・サウンドを奏でる彼も決して嫌いじゃないけど、彼本来の魅力はキーボードのコード・ワークを中心に据えたサウンドにあると思うんだよね。90年代前半のプロデュース全盛期に放ったヒット曲のほとんどはキーボード・メインのサウンドだし、ソロ・アルバムで言うと、89年の2nd作『Tender Lover』の(LPで言う)B面、そして2005年に出たキラキラ・サウンドの前作『Grown & Sexy』が僕のツボ。一般にあんまり評判が良くないと思われる2002年の『Face 2 Face』も、たしかにネプチューンズとやった「There She Goes」こそ、”あら、頑張っちゃったのね”と思ったけど、名曲「What If」を筆頭に、キーボード主体の”ベイビーフェイス節”が詰まっていて僕は好きだった。


ところが、今年9月に出た新作『Playlist』はジャケ写からもわかる通りアコースティック・サウンド1本、しかもカバー曲がメインというなんとも微妙な内容。しかも(個人的な愚痴ですが)ユニバーサルに移籍ということで僕の手元には届かず、最近ようやく購入に至った。で、最初から”やはりベイビーフェイスの魅力はキーボード・サウンドにあり。アコギは置いて出直してきやがれ!”と書くつもりで聴き始めたんだけど、これが予想以上に良いんだわ。取り上げられているカバー曲のオリジナルは、ジェイムス・テイラーを始め、エリック・クラプトンボブ・ディランダン・フォーゲルバーグ、ブレッドといった白人アーティストばかり。それもR&B〜ソウル寄りのアレンジを施すわけではなく、ただただシンプルなアコースティック・サウンドに乗せて歌うだけ。でも、原曲の良さに彼独特の優しい歌い方が相まって、あぁこういうベイビーフェイスもありだなぁ、なんてあっさりと持論を撤回してしまった。さらに、彼自身のペンによる新曲(日本盤は4曲)もなかなか出来が良くて大満足。これまでキーボード・メインの音こそがベイビーフェイスだと思ってきたけど、彼本来のルーツはこういった曲たちに(も)あるんだろうか? 今回初めて本名をアーティスト表記にしてることからも、その可能性は大きそうだね。


ただ、このアルバムはもはやR&Bではなくソフトロックとしか言いようがない。こういったサウンドが彼の原点か、本当にやりたいことなのかはともかく、この路線を続けるならR&Bアーティストとしての彼は長く持たないと思う。こんなアルバムを出してしまって、アメリカのファンからそっぽを向かれてないのかな?ちょっと心配だわ。