Nothing Left To Lose / MAT KEARNEY

cafela2006-04-23

JOHN MAYER、FIVE FOR FIGHTING、TRAINなど、良質なシンガーソングライターやバンドを輩出してきた優良レーベルAWARE RECORDSから登場したMAT KEARNEY。マット・キーニー、いや、キーネイかな? 読み方はよくわからないけど、最近気に入ってよく聴いています。ガツンとくる派手さはないものの、これがなかなか面白いアーティストなんですよ。


一昨年に『Bullet』というアルバムを出しているマットさん(こっちは未聴)、今回と同じ曲もいくつか収録されているようなので、この『NOTHING LEFT TO LOSE』がメジャーデビュー作ということになるんだろうか。簡単に言うと「ちょっと鼻にかかった声でいいメロディーを歌う男性シンガーソングライター」なんだけど、この人の一番の個性は半数近くの曲で登場するラップ。いや、いわゆる「語り」ではなく「ラップ」だと言い切っていいと思う。ちゃんとしたフロウを伴ったもので、それもJASON MRAZのように「いかにもシンガーがやってます」的なメロディアス・ラップじゃないのが面白い。でも、ブラック・ミュージック色の強いサウンドなのかと言うと全然そんなことはなく、打ち込みもほとんど使ってないし、特にビートを強調しているわけでもない。ギターやピアノを基調としたオーソドックスなシンガーソングライター・サウンドが中心で、全体的に透明感があって洗練されている。


「オーソドックスなシンガーソングライター・サウンド+ラップ」、、、こうやって文字にしてみると、いかにも合わなさそうな組み合わせだ。でも、実際に聴いてみるとこれがまったく違和感を感じない、どころか完璧にハマっているから不思議。いわゆるミクスチャー・ロックのラップなんかにアリガチな「ムリヤリ感」もなく、実に自然に音に乗っている。まぁ、彼の場合、ラップはあくまで曲の1部にすぎず、基本はメロディーがちゃんとある音楽なんだけど、これはまさにありそうでなかった気持ちよさ。また、歌メロにも独特の節回しがすでに確立されていて、しみじみと良い曲を書く素晴らしい才能の持ち主だと思う。こんな逸材を見つけてくるなんてさすがAWARE RECORDS! 間違ってもHIP HOPファンにはオススメしないけど、大人のための良質なロックが好きな人なら試聴してみる価値は大いにありますよ。


目下のリード曲は、タイトル・トラックの「Nothing Left To Lose」(この曲はラップなし)みたいだけど、個人的に特に気に入っているのはオープニングの「Undeniable」(アコギとラップの絡みがカッコイイ!)とこのアルバムを買うきっかけになった「In The Middle」という楽曲。この「In The Middle」はピアノをバックにしたスロウ・ナンバーで、バース部分のラップとサビの歌が実にいい雰囲気。サビのメロディーがBOBBY BROWN「RONI」の大サビ(♪The truth about a roni, she's a sweet lil girl...ってとこ)に似ているのも面白い。で、白玉を鳴らしているオルガンがゴスペルっぽいなと思ったら、実はこのMAT KEARNEY、CCM(COMTEMPORY CHRISTIAN MUSIC)の人だったみたい。歌詞を読むと確かにそうだ。この数年、PLUMB、PAUL COLMAN、MATTHEW WEST、THE AFTERSなど、イイ!と思ったポップス/ロック・アーティストのCCM率が高かったんだけど、今回もそうだったのか。