Falling In Between / TOTO

cafela2006-01-20

25日の日本先行リリースに先駆けて音源をゲットしやした。『Mindfileds』以来、実に7年ぶりのオリジナル・アルバムですよ。好きなアーティストはたくさんあれど、新作が聴ける!というだけでこんなに興奮するのは彼らだけ。出るというだけで感動を押さえきれない。


リリース元は、去年、ジャーニーの新作も出したイタリアのメロディックロック系レーベル、フロンティア・レコーズ。(アメリカでのリリースは未定なのかな?)日本はキング・レコードからのリリースで、心配していたプロモーションも紙媒体などに関しては頑張っているみたいだ。ただ、ラジオなどでのプロモーションはあまり期待できないけどね。


というか、そもそもこのアルバムは非常にプロモーションしにくい内容なのだ。


事前のインフォメーション通り、全体的にプログレフュージョンといったサウンド。パワー・フュージョン、ロック・フュージョンといった趣でフクザツな構成の曲が多い。スティーヴ・ルカサーは「これがTOTOとして最後のアルバムになってもいい。それだけの自信作だ」みたいなことを言っているらしいけど、それはちょっと・・・。ハッキリ言って全体的にメロディが覚えにくく、これまでで一番取っつきにくいアルバムだと言って間違いない。「往年の魅力が復活」なんて記事も見たけど、『Mindfileds』のように昔のTOTOを連想させる部分は少なくて、ファンを気にせずに次のステージへ上っちゃった感じだ。


まぁ、インスト・パートはどんなにテクニカルでもいいし、アルバムに2,3曲は演奏を聴かせる曲があってもいい。それはTOTOの大きな魅力だから。けど、ちゃんとシングル・ヒットが狙えそうな曲がないと困るわけです(レコード会社もファンもね)。


今回、シンプルなポップ・ロックは1曲もないし、ルカサーお得意のキラー・バラッドもなし。1stシングル(になると言われている)「Bottom Of Your Soul」にしても、サビは最高だけどそこに行くまでが地味過ぎる(しかも長い!)。「演奏はメチャウマ、でも曲はポップかつキャッチー」というのがTOTOだと思っていただけに、最初に通して聞いた時は「ん???」という感じになってしまった。特に頭の2曲目はかなり引っかかりに乏しくて、1曲目から視聴していくと聴き所まで辿りつけないかも・・・。


でもちゃんと聞き込めば、彼らが今、様々なしがらみから自由になって、本当に自分たちの好きな音楽を作っているというのがよくわかる。どこを切ってもTOTOにしか作れない豊潤なサウンドで、このバンドが持つマジックと音楽的な技量の深さは今なお健在。聴く度に「やっぱTOTOだなぁ」と強く感じる。しかも今の音楽シーンをまったく意識していないのに懐古趣味的な雰囲気がないのはさすがだ。


オープニングのタイトル曲で聞けるオリエンタル調のメロディとか、同じフレーズを繰り返しながらゴスペルっぽく盛り上がっていく9曲目の「Spiritual Man」辺りは間違いなく新境地。また「Bottom Of Your Soul」でのアフリカン・ビートの取り入れ方は、これまでのアフリカ・シリーズよりさらに奥深くなった気がする。


そして今回非常に印象的なのは、彼らならではのヴォーカル・パート。いつになくコーラスが耳に残るし、ツイン・ヴォーカル、トリプル・ヴォーカルの曲が多いのは文句ナシに楽しい。特に「Spiritual Man」で聴けるデイヴィッド・ペイチ〜ボビー・キンボールグレッグ・フィリンゲインズというリレーは最高だ。


今回から新メンバーになったグレッグ・フィリンゲインズ(クラプトン・バンドなどにもいた敏腕キーボーディスト)にもちゃんと見せ場が用意されている。彼がリード・ヴォーカルの「Let It Go」はファンキーかつキャッチー(でもキメのフレーズはめっさ複雑!)で、個人的には今作のベスト・カット。次のシングルはこの曲でいいんじゃないかな。それに「Spiritual Man」でのソウルフルな歌いっぷりも最高だ。この2曲で聴けるブラック・ミュージックのフィーリングだけでもグレッグが加入した価値は多いにあるね。


残念ながら今の音楽シーンを考えると、このアルバムがチャート的にヒットして、彼らがアメリカでも再評価される可能性は低そうだ。だけど、ファンとしてはまたメジャーレーベルと契約して本国アメリカでもう一花咲かせて欲しい。それこそサンタナの『Supernatural』ぐらい華々しいヤツを。(かと言って、若手アーティストとのコラボ・アルバムを作られても困るけど・・・)