CASHMERE MUSIC / 古内東子

cafela2005-12-10

最近、日本の音楽を良いと思えないのが悩みだったりする。
ヒットチャートに上ってくる音はもちろん、
対象を広げても、普通に愛聴できる日本人アーティストの新譜はなかなか出てこない。
別に1リスナーとしてはそれでもいいんだけど、仕事上はあまり好ましくないわけで、
「最近J-POPがまったくイイと思えないんですよね〜」というのが口癖みたくなってきた。


そういった兆候が出始めたのは、ちょうど2000年代に入るか入らないかぐらいの頃かな。
おそらく日本のミュージシャンの中で、
洋楽に対するコンプレックスが少なくなってきたんだと思う。
「俺ら日本人なんだから、日本ぽくてもいいじゃーん」みたいな連中が増えたのか、
ホント、どいつもこいつも味噌臭い曲ばっか作りやがって!と思うんですよ。
でも、周りには「昔に比べて日本の音楽はレベル上がった」とか言うヤツも多いからウンザリするね。
曲作り、歌唱力、演奏力、どれをとっても80年代の方がレベル高かったやんけ!
80年代に比べて確実に進歩したのは録音&編集技術だけだよ。


こんなことを書くと、
「アンタが年とっただけでしょ〜?」なんて声が聞こえてきそうだけど、
洋楽に関しては新譜もメチャメチャ楽しいから、簡単に年のせいだとは認めたくないわけで・・・
いや、やっぱり年のせいですかね?


ちなみに、今年マトモに聞き込んだ邦楽の新作はたったの2枚。
1枚は、高田みち子のメジャーセカンド・アルバム『TALEA DREAM』。
そしてもう1枚は、出たばかりの古内東子の新作『カシミア・ミュージック』。
あれ、どちらもサウンド・スタイル的にはそんなに遠からず、って感じだな。
やっぱ年のせいなんだろうか。


というわけで、ようやく古内さんの話。
この人はアーティストとしてかなり過小評価されていると思う。
みんなの記憶に残る大ヒット・アルバムや大名曲こそないかも知れないけど、
こんなに長い間、コンスタントに良質のアルバムを作り続けている人はほとんどいないでしょ。
メロディ作りも上手いし、メロディに違和感なく日本語をはめるセンスにはいつも感心させられる。
日本の女性シンガーソングライターとしては、松任谷由実以来の才能かも知れない、
そんな風に思う、こともある。


で、12作目のオリジナル・アルバムとなる今作も相当良い!!どころか、
個人的には、『Hourglass』以来では?というほど聴き倒している。
前作があまりしっくり来なかったので、少し心配していたんだけど、
今回は自信を持って「素晴らしい!」と断言できます。


なによりも大きいのは、曲の出来、特にメロディの粒が揃っていることかな。
どの曲も印象的なフックがあって、ちゃんと耳に残るのがいい。
個人的に一番お気に入りなのは、ラストの「Happy」という曲。
サビのメロディ展開には、本当にグッときましたよ。


サウンド的には複数のアレンジャーを招く形で作られていて、
全体的に打ち込みメインの曲が多い。
まぁ、この人に関しては、生音AOR路線の音作りが合っている気はするけど、
曲の出来さえ良くてキチンと作り込めれば、生音でなくとも問題はない。


今回の新境地は、シングルにもなった6曲目の「コートを買って」。
4つ打ちを導入したエレクトロ・テイストのサウンドは、ファンの間では賛否両論みたいだけど、
個人的には素晴らしいアレンジだと思うし、全体の流れの中でも浮いて聞こえることはない。
キラキラしたシンセのフレーズが最高に気持ち良いねえ。


そしてもう1つ、今回のポイントと言えるのは、
前々作辺りから顕著になったヘンにこねくり回すような歌い方、
あれがあまり気にならなくなったこと。
それでも、まだクセの強い歌い方だから、
もう少し真っ直ぐな発声に戻して欲しいとは思うけど、今回はかなりマシになった。
ヴォーカル録りのディレクションをした人、GOOD JOB!です。